サーブという自動車メーカーを知っていますか?
もともとはスウェーデンの航空機会社です
第二次世界大戦の頃に、軍用機の製造を目的に設立されました
戦後は企業の多様化を図って、自動車部門や民間機部門も作られました
民間機部門では主に小型旅客機を中心に作っていましたが、軍事部門の方が需要が高かったためか、1999年に民間機から撤退してしまいます
自動車部門では、割と個性的な車を作っていて、1967年に本格的なファミリーカーの99が登場します
それまでの小型のボディに2ストロークエンジンの流れを断ち切って、新たな構造で勝負を仕掛けてきたようです
前輪駆動で、縦置き直列4気筒のエンジンを45度傾けて載せるという、独特の構造を持ち、空力にも気を使い、低いノーズと広い視界を両立させた車となりました
後に量産ターボ車の代表例の一つともなる、ターボエンジンを搭載した99ターボへと発展していきました
そして1978年に登場した900は、99の主力モデルを改良し、ターボエンジンも引き継がれることになります
アメリカの衝突安全基準に適応させるため前部を伸ばし、乗用車として完成されたモデルとなっていきました
サーブが99で作っていた思想を、洗練させていった車が900だったということです
長いノーズや立ち気味のAピラーなど、他のメーカーではあまり見かけない、独特の世界観を作っていったのですね
ただこの車の変わっていた点は、見た目だけではありませんでした
サーブはもともと航空機メーカーなので、機能性を重視して構造を決めていくという発想が強かったようです
この感覚は900の室内にもはっきり出ていて、運転席まわりはただのお洒落なダッシュボードではなくて、ドライバーを包み込む戦闘機のコックピットのような構造でまとめられました
イグニッションキーが前席の間に配置される構造も、99から続くサーブの特徴であり、こういう細部に飛行機屋の構造が見えてくる車でした
構造面もなかなか個性的で、前輪駆動だけれでもエンジンは縦置きで、普通なら車内空間が犠牲になってしまいます
でも長めのノーズでこれを回避し、おまけに左右のトルクステアが起きにくい作りとなっているのです
足回りもフロントにダブルウィッシュボーン、リアがビームアクスルという組み合わせで、高速走行時の安定感などに特化した作りとなっていました
ハッチバック中心の実用的なボディに、DOHCやターボといった刺激的なエンジンを合わせており、この900は実用品にしては、ちょっと知的で速いという立ち位置の車になっていました

日本では80年代のバブル期に独特の存在感を放っていたようです
多分人気の理由はベンツやBMWのような高級車だというわけではなくて、少し文化的な匂いがして、ちょっと絵になる感じだったのかもしれません
そういうちょっと普通ではない輸入車だったからこそ、業界人っぽい空気とも相性が良かったのかもしれません
今でも日本で一番記憶に残っているサーブの車は、この初代900じゃないかって思います
この後サーブは2代目900や9−3へ続いていくのですが、2000年を過ぎるとその頃親会社になっていたアメリカのGMの経営不信のあおりを受けて、さまざまな自動車メーカーに売り渡されて苦戦していきます
数度の営業停止や再開を繰り返し、最終的には2014年あたりで会社としては終わりを迎えてしまいます
航空機会社が作っていた、少し変わった知的な車も、新たに生まれ変わることなくわたしたちの前から去ってしまったというわけです

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