静寂に声が宿るとき ディオンヌ・ワーウィックとの黄金期

咲良の音楽余話

今日は棚からこのレコードを取り出して針を落としています
少しだけ時間を巻き戻したくなるときがあります

イントロが流れた瞬間に分かります
ああ これはバート・バカラックだと

音は分厚くなく派手でもない、それでも耳が離れない
その音に 声が重なったとき彼の音楽は完成します

ディオンヌ・ワーウィックとの出会い
都会的で 冷静で感情をぶつけないけれど
内面の傷を隠してもいない

1960年代にポップスは変わり始めていました
感情を積み上げる時代から洗練と余白の時代へと
その変化の中心にこの二人がいました

Walk On By

失恋の歌でありながら泣き叫んだりしない
そこから歩き去るという動作の中に孤独を閉じ込める

少しずれたような進行スタイルに予想外の転調
その揺れをディオンヌの声は崩さずに受け止める

強く歌わないけれど、決して弱くもない
距離を保ちながら心に触れてくる

背景で鳴る金管はトランペットのように鋭くはない
むしろ丸みを帯びた響きで都会の夜をそっと縁取るよう
その音色には後年チャック・マンジョーネのフリューゲルホルンにも通じる
少しの気だるさと切なさがある

夜の都会と 南国の午後
時間帯は違ってもどちらにも静かな寂しさが漂う

日本ではHeartbreakerがヒットし親しまれたディオンヌですが
それはビージーズの作品でした
作曲家が変わっても彼女の声は成立しています
この黄金期で築かれた音楽の品格が強かったのでしょう

静寂に声が宿るときそこにあったのは
都会の孤独と 洗練の美しさでした

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