いちご白書をもう一度
今日は棚からこのレコードを取り出して針を落としています
少しだけ時間を巻き戻したくなるときがあります
1970年に公開されたアメリカ映画 The Strawberry Statement
60年代後半の学生運動を背景に若者たちの葛藤を描いた作品です
社会を本気で変えられると信じた時代の空気がそこにはありました
その映画に触発されるかたちで
1975年に発表されたのがバンバンの「いちご白書をもう一度」です
作詞作曲は荒井由実さん、ユーミンですね
日本のフォークシーンの中で静かに広がり
やがて多くの人の記憶に残る一曲になりました
けれどこの歌が描いているのは
激しい衝突やスローガンではありません
歌詞の中心にあるのは
就職が決まり髪を切ったあとのひと言
「もう若くないさと君に言い訳したね」
あまりにも静かな場面です

70年代の若者たちは
理想を掲げ、議論を重ね
未来を本気で語っていました
明治維新の志士のように
社会は変えられると信じていたのだと思います
しかし現実は容赦なく押し寄せます
就職という言葉
大人になるという選択
理想と折り合いをつける瞬間
その小さなため息が
この曲には込められています
だからこそ「いちご白書をもう一度」は
政治の歌ではなく、若さの歌として響きます
革命の勝敗ではなく理想を信じた時間そのものを
そっと振り返る歌です
令和の今
社会を変えるという言葉は
どこか白々しく遠くにあるように感じます
けれど理想を抱いた若者たちの足跡は
確かにこの国にもありました
レコードの回転を眺めながら
あの時代の空気に思いを巡らせます
理想を信じることは
決して無駄ではなかったはずだと
静かに胸の奥で思いながら


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