La Boumヘッドホン越しの初恋

咲良の音楽余話

今日は棚からこのレコードを取り出して針を落としています
少しだけ時間を巻き戻したくなる夜があります
1980年公開のフランス映画 La Boum
思春期の揺れをそのまま閉じ込めた物語
その主題歌がRichard SandersonのRealityです

物語の中心にいるのは十四歳の少女
大人でも子どもでもない曖昧な時間
家族の問題や学校生活のざわめきの中で
胸の奥に芽生える初恋の予感
その淡い感情をそっと包むように流れるのがこの曲です

けれどRealityは単なる挿入歌ではありません
あの有名なパーティーの場面
騒がしい会場の中でヘッドホンを差し出される瞬間
片耳を通して届く旋律
外の喧騒がすっと遠ざかり
ふたりだけの世界が生まれる
音楽が空間を切り取り
恋が始まる密室をつくる

ヘッドホン越しという仕掛けは
まるで映画館の暗闇そのもの
観客もまた音楽に包まれ
自分が初恋の当事者になったような錯覚を覚える
恋とはこんなにも静かで
こんなにも鮮やかだったのかと

甘く透明なメロディーは
八十年代の空気をまといながら
今聴いても古びない
それは音楽が流行を越えて
記憶の装置として働くからかもしれません

令和の部屋でレコードを回しながら
あのヘッドホンの場面を思い出します
現実はもっと複雑で
恋は簡単ではないと知っていても
それでも誰もが一度は
あの瞬間に憧れたはずです

Realityは映画とともに完成する曲
そして映画はこの曲によって永遠になる

バレンタインの夜
少しだけ世界の音を遠ざけて
ヘッドホンの中の初恋を
もう一度覗いてみたくなります (´ー`)

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